効果的な面接対策をするには、高卒公務員試験の面接の特徴を知っておくことが大切。
高卒公務員試験の面接は、『コンピテンシー評価型面接』という方法が用いられています。
コンピテンシー評価型面接の特徴を知ったうえで、早めに対策しないと手遅れになるので要注意。
でも、コンピテンシーって聞いたことない言葉でなんだか難しそうですよね?
コンピテンシーは、アメリカの心理学者デイビッド・マクレランドが提唱した概念。
コンピテンシーは心理学の専門用語なので、突き詰めると非常に難しいです。
ここでは、高卒公務員試験の面接に必要な部分をピックアップして、コンピテンシー評価型面接を解説します。
高卒公務員指導歴10年以上、心理学の国家資格『公認心理師』を持つ僕が解説します!
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高卒公務員の面接試験はコンピテンシー評価型面接
高卒公務員の面接試験ではコンピテンシー評価型面接という方法が用いられています。
コンピテンシー面接の特徴は、ザックリ言うと次のようなもの。
- 「有能な人かどうか?」を評価するために、過去の行動について深く掘り下げて質問する面接。
過去の行動を掘り下げて質問されるのが特徴。
例えば、以下のような感じです。
- 生徒会長をやっていたとの事なんですけど、一番苦労したことはどんなことですか?
-
文化祭の計画をしたときに、実施を反対する生徒がいて揉めてしまったことです。
- それはどうやって乗り越えましたか?
-
クラスごとに話合いをしてもらった後に、各クラスの代表者を集めてそれぞれのクラスの意見をまとめました。その意見に基づいて、反対する人たちには文化祭を実施する理由の説明と妥協案の提案をして交渉しました。その結果、反対していた人たちからも納得していただき、無事に文化祭を実施できました。
- なぜ、生徒会長をやろうと思ったんですか?
-
先生方からの推薦があり、私自身も学校をより良くしていきたいと思い、生徒会長をやりました。
- 実際に生徒会長をやってみてどうでしたか?
-
人にはそれぞれの考え方があり、自分の考えはその中の一つに過ぎないことを学べました。生徒会長になった当初は、リーダーシップを発揮して周りを引っ張っていかなければならないと思い、自分だけで考えて指示を出して物事を進めていました。その時は、生徒会メンバーとの対立が絶えませんでした。生徒会メンバーの一人ひとりとじっくり話をしてみた結果、自分とは異なる考え方をしていたことが分かりました。その後は、自分だけの考えではなく、一人ひとりの考え方を尊重することで、生徒会がまとまるようになりました。
「生徒会長」という話題について、1つではなく複数の質問がされます。
1つの質問に回答すると、その回答から次の質問がされます。
他にも、アルバイトであれば、
- アルバイト経験はありますか?
- どの部門で仕事をしていましたか?
- アルバイトで一番印象に残っていることはなんですか?
- クレームを受けたことはありますか?
- その時、どうやって対処しましたか?
といった感じで聞かれます。
ポイントは、過去のエピソードが聞かれること
コンピテンシー評価型面接のポイントは、過去のエピソードを聞かれること。
過去のエピソードが聞かれるので、今までの経験を整理しておくことが必要です。
エピソードなら何でもいいというわけではありません。
エピソードを単に語ってもダメです。
面接官は、エピソードを通してあなたが有能かどうかを判断しています。
単にエピソードを言うだけではダメで、『有能さを発揮したエピソード』を言わないと評価されません。
以下のAさん、Bさんの例で見てみましょう。
Aさん
- 計画を立てるときに行っていたことは何かありますか?
-
やることが沢山あるときには、重要なものから順に計画を立てていました。
Bさん
- 計画を立てるときに 行っていたことは何かありますか?
-
お気に入りのペンを使っていました。
Aさん、Bさんのどちらも過去のエピソードを語っています。
しかし、Bさんのエピソードは単純な出来事を語っただけで、これでは有能かどうか判断できません。
Aさんのエピソードは、『優先順位を考えて物事に取り組める』と評価できます。
このように、有能さを発揮したエピソードを準備しておくことが大切です。
もう一つ重要なのはコンピテンシー評価型面接はウソがつけないということ。
ウソのエピソードだと、掘り下げた質問が来た時にこたえられなくなってしまいます。
このように行われるがコンピテンシー評価型面接です。
面接官役をするときには、「過去形」で質問するのがコツです。
・失敗した経験とそこから学んだことは?
・なぜ大学に行かなかったのか?
・どのように改善したのか?
など。
過去形でエピソードを聞き出し、それに対してさらに深く掘り下げる質問をするのがポイントです。
なぜ、コンピテンシー評価型面接が行われるのか?
コンピテンシー型面接が行われる理由は、能力が高い人材を採用したいからです。
採用する側は、能力が高い人を採用したいと思っています。
どうすれば、 能力が高い人かどうか判断できるのでしょうか?
学力を見る?
学力も確かに能力の一つですが、学力以外にも様々な能力があります。
心理学の研究では『学校の成績や資格では、仕事での成功は予測できない』ことが明らかになっています。
勉強ができる≠仕事ができる
いくら勉強ができても、不祥事を起こしたり周りの人とトラブルばかり起こすような人は、採用したいと思いません。
教養試験で学力面が評価され、面接試験では学力以外の面が評価されます。
教養試験:学力が見られる。
面接試験:学力以外の能力が見られる。
高卒公務員試験で『単に資格を持っていること』があまり有利にならないのも、こういった理由です。
コンピテンシーとは?
コンピテンシーは、ひとことで言うと「能力」。
ただ、単なる能力ではなく「有能な人が持つ、思考特性や行動特性」をコンピテンシーと言います。
コンピテンシーは様々なものがありますが、ここでは高卒公務員試験を受験する人向けのコンピテンシーの例を紹介します。
- 情報を鵜呑みにせず、多くの情報を得ようとする意欲。
- 物事を掘り下げたり精査したりする。
- 個人的に現場に行く。
有能な人は、自分で行動して情報を集めます。
実際に自分の目で確かめることは重要。
税務職員採用試験の面接では、「税務署に行ったことはありますか?」と質問されたことがあります。
さらにそこから、「実際に行ってみた、税務署のイメージを教えてください」と質問が来ました。
本当に興味があるなら、実際に行ってみますよね?
志望先には実際に行ってみましょう。
ただ行くだけでなく、実際に行ってみて感じたことや考えたことをメモしておくと面接の際に役立ちます。
- 目標の達成に貢献している人たちと、友好的で暖かいネットワークを築く。
公務員の仕事のほとんどは、1人で行うことはありません。
チームワークや協調性は、仕事で成果を出せる人の特徴です。
- 周りの人たちを教育し、成長をさせる。
- 周りの人の学習や成長に協力したいという純粋な意欲。
チームメンバーの個々の能力が上がれば、チーム全体としての能力も高まります。
同僚、部下の能力を高められるような関わりができる人は、組織にとってな貢献する人材。
面接試験で語るエピソードは、このようなコンピテンシーを発揮したエピソードを語る必要があります。
なぜ、エピソードが聞かれるのか?
コンピテンシー型面接では、エピソードが聞かれるます。
では、なぜエピソードが聞かれるのでしょうか?
それは、エピソードを聞くことで、受験生が有能な人が持つ思考特性や行動特性を持っているか判断できるからです。
例えば、 「あなたはあきらめずに粘り強く物事に取り組めますか?」と質問されたら、どう答えますか?
「はい、取り組めます」と答えます。
この質問では、本当に粘り強く物事に取り組めるかわからないです。
「はい、取り組めます」と、言うことは簡単ですがその証拠がありません。
苦手を克服するために行ったことは何かありますか?
長距離走が苦手だったので、毎日早朝にランニングをしました。タイムがなかなか縮まらないときもありましたが、2年間続けました。
このような質問・回答であれば、面接官は「ああ、この人は粘り強く物事に取り組めるだな」と判断します。
なお、コンピテンシー評価型面接は嘘のエピソードはすぐに見抜かれてしまうので要注意。
嘘のエピソードだと、深く掘り下げて質問を繰り返すことにより、回答できなくなってしまったり発言に矛盾が生じたりします。
コンピテンシー評価型面接は、実際に行った行動とその時の状況について詳細に尋ねることによって、真実に迫ることができるということです。
対策
コンピテンシー評価型面接の対策はどのようにすればいいのでしょうか?
コンピテンシーは、有能な人の思考特性や行動特性。
これは、短期間では身に付きません。
また、学校の授業のような知識教育で高めることはできません。
何らかの活動を通して身についていくものです。
- 有能な人の思考特性や行動特性。
- 短期間では身につかない。
- 知識教育では不可能。
- 何らかの「活動」を通して身に着ける。
これらを踏まえると、対策は以下のようになります。
- 高校1・2年生から積極的にいろいろな活動に参加する
- エピソードを複数挙げる
- エピソードの中で、どのようなコンピテンシーが発揮されたかを検討する
- エピソードが無い場合には「作る」
対策① 高校1・2年生から積極的にいろいろな活動に参加する
コンピテンシーは知識教育で高めることは不可能で、何らかの「活動」を通して身に着けるものです。
いろいろな活動に参加することが対策になります。
具体的には、部活動、アルバイト、ボランティア、生徒会など。
これらは、面接試験でも頻繁に質問されます。
可能なら、部長や生徒会長などのリーダーに挑戦してください。
なお、面接で話すエピソードは、高校以降のものです。
中学以前のエピソードばかりになると、面接官に『高校時代は消極的だったのかな』と思われてしまいます。
したがって、高校1・2年生から既に面接対策が始まっていると思ってください。
高校1・2年生から、様々な経験をしてエピソードを集めておくことが必要です。
対策② エピソードを複数挙げる
面接票の記入や面接練習の際には、今まで行ってきた活動を思い出してエピソードを複数挙げてください。
できるだけ沢山出すのがポイント。
エピソードが沢山あれば、それらを組合わせたりそれらの中からいいものを選んだりすることができます。
自分には人に誇れるようなエピソードがないです・・・
立派な結果が無くても大丈夫!
自分では大したことがないと思っているエピソードでも、面接指導をする先生から見ればすごくいいエピソードということはよくあります。
エピソードは立派な結果よりも、結果に至るまでの思考・行動が大事。
『インターハイ優勝』よりも『練習試合で勝った』というエピソードの方がいい場合もあります。
Aさん『 特に自分では意見を出さずに、顧問の先生に従った結果、インターハイで優勝しました。』
Bさん『 「次の練習試合で勝とう!」という目標を立て、「どうすれば勝てるか」を部員全員で毎日話し合いた結果、勝つことができました。 』
この二つだと、Bさんのほうがいいエピソードです。
Bさんのエピソードからは、チームワークや対人関係の能力などが見て取れます。
積極的に行動してきた人は、立派な結果ではなくても魅力を伝えるエピソードは必ずあります!
また、失敗した経験は、面接で話しやすいです。
実際、「失敗した経験とそこから学んだことは?」というのは面接でよく聞かれますし、作文試験の課題でもよく出ます。
積極的にチャレンジして、いっぱい失敗しましょう!
対策③ エピソードの中で、どのようなコンピテンシーが発揮されたかを検討する
エピソードを複数挙げたら、その中でコンピテンシーを発揮したエピソードを探します。
異なるエピソードで、同じコンピテンシーを発揮した例があると面接では効果的です。
長所以外の質問で、エピソードを言ったときに長所と同じコンピテンシーが出てくると信憑性が増します。
例えば、面接の序盤で長所について聞かれた、以下のように答えたとします。
- あなたの長所を教えてください。
-
私の長所は、人に分かりやすく説明することができることです。
- 具体的にどんな場面で分かりやすい説明をしましたか?
-
部活動の練習メニューを部員に説明した時です。わかりずらい言葉を使わないように注意し、相手に合わせた話し方を意識していました。
そして、面接の終盤で以下のような質問が来たとします。
- 苦手科目が英語ということですが、克服する努力は何かしましたか?
-
はい、以前外国人の方に道を聞かれた時にうまく話せなかったので、それ以来英会話の勉強をしています。
- 道を聞かれたときには、どのように対応したんですか?
-
英会話がうまくできなかったので、地図を書いて身振り手振りで説明しました。その結果、分かっていただくことができました。
「地図を書いて身振り手振りで説明した」というのは、「分かりやすく説明したエピソード」と捉えることができます。
このように、異なるエピソードから同じ能力を発揮したエピソードがでてくると、説得力が高まります。
対策④ エピソードが無い場合には「作る」
高校3年生で、エピソードが無いという人は作るしかありません。
部活動や生徒会は、高校3年生から始めるのは厳しいので、少なくともボランティアに参加してみるのをおススメします。
とはいえ、高校3年生でいろいろな活動に参加に参加すると、公務員試験の勉強時間が足りなくなってしまいます。
そこでおススメするのが、「公務員試験の勉強を通して、コンピテンシーを高める」方法です。
具体的には、公務員試験を受験する仲間と「教え合い」をすることです。
公務員試験を受験する友人が解けない問題を教えてください。
人に教えることで、関係性の構築 、説明する力、などを高められ、そのエピソードになります。
人に教えることで、自分が理解できていないところも明らかになります。
人に説明するためには、自分は完璧にわかっている必要があり、説明で詰まったところが自分の弱点です。
この方法であれば、面接試験と教養試験の両方の対策になります。
説明する力は、面接で大事!
人に教えることで説明する力が高まり、面接官に分かりやすく説明することができるようになります。
エピソードが無いと対策不可能
面接指導をしていて一番困るのが、何の活動にも参加してこなかった生徒。
活動に参加していないと、エピソードがありません。
様々な活動に参加した体験がある人であれば、「そのエピソードではこういう能力を発揮してたね」「そのエピソードはこう言えばいい表現になるよ」とアドバイスできます。
しかし、そのような体験が無いと、出来るアドバイスが非常に限定されてしまいます。
体験・エピソードは料理で言うなら材料。
材料が多くあれば、様々なアドバイスが可能ですが、少ない材料ではアドバイスできることも少なくなってしまいます。
「 ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、豚肉、ブロッコリーがあるんですが、何が作れますか?」と聞かれれば、カレーが作れそうだね。シチューも行けそう。肉じゃがにするっていう手もあるね」とアドバイスできます。
「ニンジンしかありません。何が作れますか? 」と聞かれた場合できるアドバイスは非常に限定されたものになってしまいます。
面接の材料となる体験を沢山集めておくことが大事。
高校1・2年生から積極的にいろいろな活動に参加しておくことが、面接対策として非常に重要です。
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まとめ
- 高卒公務員の面接試験はコンピテンシー評価型面接。
- 過去の行動を掘り下げて質問されるのが特徴。
- 単にエピソードを言うだけではダメで、『有能さを発揮したエピソード』を言わないと評価されない。
- 嘘のエピソードはすぐに見抜かれてしまう。
- コンピテンシーは知識教育で高めることは不可能で、何らかの「活動」を通して身に着けるもの。
- 高校1・2年生から積極的にいろいろな活動に参加しておくことが、面接対策として非常に重要。
参考文献
川上真史・斎藤亮三 (2006). 『コンピテンシー面接マニュアル』 弘文堂
McClelland, D. C. (1973). Testing for competence rather than for “intelligence.” American Psychologist, 28(1), 1–14.
大賀英徳 (2021). 公務員試験 現役人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本 実務教育出版
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山口裕之(編) (2009). 『コンピテンシーとチーム・マネジメントの心理学』 朝倉書店